まずは放射線ホルミシスについてわかりやすく説明している動画をご案内いたします。                          ■弊社代表取締役伊藤がホルミシスについて講演■                                                                                                           次に放射線ホルミシス効果の発見と放射線のしきい値、身体活性のメカニズムについて詳しく解説します。

ホルミシス効果の発見

ラッキー博士の発表

放射線ホルミシス効果を発表したトーマス・D・ラッキー博士

「微量の放射線は生命にとって有益である」
1982年、これまでの定説をくつがえす見解がアポロ計画の中で提出されました。

宇宙飛行士は2週間もの間、地球の何百倍という宇宙線(放射線)を浴びるが、身体にとってどのくらいのダメージになるのか? 当時のNASAの医学顧問でミズーリ大学の生命科学教授であったトーマス・D・ラッキー博士は、「人体への放射線の影響」を10年にわたり調査したのです。

予想に反してその結果は、「宇宙飛行士たちは宇宙に行くと元気になって帰ってくる」というものでした。
微量放射線は人体に対して刺激として働き、生体を活性化させ、生命活動にとってはかえって有益である——米国保健物理学会「Health Physics」誌(1982年12月号)に論文発表され、微弱な放射線による人体への効果は、ギリシャ語の「horme(刺激する)」より「放射線ホルミシス」と名付けられたのです。

ラッキー博士が提唱した放射線ホルミシス効果

微量な放射線は次のような効果がある。
① 免疫機能の向上
② 身体の活性化
③ 病気の治癒
④ 強い身体をつくる
⑤ 若々しい身体を保つ

ラッキー博士の発表を裏付ける研究結果

宇宙旅行と同じ放射線(X線)を照射したネズミの実験

ガン抑制遺伝子p53の活性変化

1ミリシーベルト/日(1.4レム/2週間)照射
筋肉細胞中のp53タンパク(8匹の平均値)は照射後に4倍に、9日後にも3倍のまま維持された。

*宇宙空間の放射線量:地上の100倍以上
*航空機(高度1万メートル):0.1ミリシーベルト/日

奈良県立医科大学 医学部 教授 大西 武雄先生の実験結果より

生命に有益な量:しきい値

見直されるしきい値

約50年前に国際放射線防護委員会(ICRP)は「放射線は微量でも有害であり、DNAは受けた放射線の量に比例して変異する」という説を採用しました。これは放射線量とその影響には生体反応を起こす限界線量である「しきい値」は存在しないとする説でした。

しきい値とは一般に境界線、境目のことを指し、それを境に効果に変化が現れることを示します。放射線にしきい値がないとする説は、放射線は少しでも有害であり、放射線が有効に働く線量はない、従って、効果が変化する境目のしきい値は設定できないとするものでした。

ところが、ラッキー博士は、放射線は低線量であれば、生体を刺激して高い細胞活性効果が認められる。放射線も生体にとって有益な分量であるしきい値があると発表したのです。

しきい値内の低線量放射線であれば、ホルミシス(刺激)効果として、生体にとって有効であると考えられ、多くの放射線学者や医療関係者の注目を集めるようになったのです。

放射線が有効となるしきい値

A:青い直線は放射線に比例して障害が発生するとする「しきい値なしの直線モデル」。
B:赤い線は低線量であれば、放射線はかえって刺激効果となり健康に寄与するとする「しきい値ありのホルミシスモデル」。

T.D.ラッキー:放射線ホルミシス(2)
ソフトサイエンス社(1993年)より

赤い斜線部分はホルミシス効果を示している。この範囲内であれば、生体にとって有効と考えられる。

放射線は少しでも怖いとする説が生まれた理由

—— 放射線実験でDNA修復作用のない細胞が検体として使用された ——

放射線の影響を調べる初期の実験では、ショウジョウバエの細胞が検体として使用されました。 検体に放射線を当てると、放射線量に比例して染色体異常が認められたのです。これにより「放射線は少しでも危険である」とする説が定説となり、約70年前、マラーの法則としてノーベル賞が与えられました。

ところが近年の研究では、DNAは損傷を受けても自らの修復機能を働かせることが認められるようになってきました。米国原子力安全委員会のマイロン・ホリコープ博士も「DNAは1日に100万件の活性酸素による損傷を受け、それを修復しながら生きている。それが、生命活動である」と結論づけ、DNAの修復活動に関する論文を発表しています。

「放射線は少しでも危険である」とする実験に使用されたのはオスのショウジョウバエの精子の細胞で、生命の中で唯一、DNA修復が行われない特殊な細胞だったのです。

このような流れから、放射線は低線量であれば、刺激効果となりDNAの修復を促すとして低線量放射線の医療への応用が試みられるようになったのです。

放射線ホルミシス効果を提唱したラッキー博士の日本での講演から、その一部をご紹介します。

私たちの生命活動に必要な放射線

ここで問題とされるのは、適正量のことです。どんなものでも有益なものから有害なものへと変る境目の値があり、これを「しきい値」といいますが、このしきい値を見極めなければいけないということです。

薬の分量と同じように、放射線も毎日の分量が適切であれば、人体に有効な作用をもたらすのです。現在、私たちが日々受けている自然放射線の1千倍、あるいは1千倍以上の放射線を毎日受けたとしても、それが限界値といえるしきい値にはならないといっていいでしょう。 従って、私たち人間は基本的に電離放射線が必要な生物であるということです。その量も現在私たちが自然に受けている20~30倍必要といえます。電離放射線は生物学的には非常に有益な働きをするものとみなされています。このことは既にエビデンス(証拠)として、さまざまなデータが報告されています。

放射線の適正量であるしきい値

環境(自然)放射線とその害が現れるしきい値

自然放射線とその害が現れるしきい値の図を見ていただきましょう(図)。大気中にあって誰もが触れている放射線量は、日本では年間約2ミリシーベルト、世界ではだいたい3ミリシーベルトです。現在私たちが得ている2、3千倍くらい、6~8シーベルトがしきい値となります。

自然放射線量の高い地域での健康への影響

自然放射線の量がもともと高レベルの土地で生活している人たちの健康データが国際的な専門誌に掲載されていますが、たとえば『ニュークリア・ロウ』(2007年)では、自然の放射線レベルが高いところで生活している人たちは、何世代にもわたって非常に健康であるとしています。

たとえばイランのラームサルでは、放射線の照射量が世界レベルの2~100倍も強いのですが、ここではほとんどガンに罹る方がいません。もう1つ、自然放射線が高レベルであるドイツのサクソニー地方ではラドンが400ハイパーキューリー・パー・リッターくらいの濃度が出ています。ここでは、喫煙の習慣が始まる以前は、肺ガンになる方はまったくいなかったといいます。

ただ、しきい値を超えると、放射線はガンの発症と密接な関係が出てくることになり、これは従来言われてきた通りです。放射線が低量であれば、肺ガン死、また肺ガンの罹患率が少ないという結果も得ています。

低線量放射線の恩恵

では、この低量の放射線の影響とは、どういったものが考えられるでしょうか? 動物における実験では分化が早くなり生殖能が高まり、免疫能も上がり、放射線抵抗性も上がりました。神経の鋭敏性が良くなり、そして、低量放射線照射を受けなかったときよりも平均寿命も長くなりました。危害を招くには高量の放射線が必要なのであって、低量の放射線照射には危害がないということになります。

低量の放射線照射によってどのような有益な効果があるでしょうか? 健康のあらゆる分野でベネフィット(恩恵)があるといえます。まず、免疫系等が活性化されます。細胞免疫も科学免疫も上がるわけです。それによって感染症が下がり、すると治癒が早まり、細胞免疫と呼んでいますが、微生物、細菌に対する免疫が上がり、細胞のサイトカイン活性等が良くなり、抗体産生細胞が活性化し、放射線防御の機能が上がることが報告されています。

身体活性化のメカニズム

電子のイオン化を促進する放射線

では、どのようにして低線量放射線によって身体が活性化するのでしょうか? 私たちの細胞の原子の周りには電子が回っています。ここに放射線というエネルギー量の高い電磁波が通過すると、放射線の電離作用により電子が軌道を外れて自由電子となって走り回ります。元素や原子に入り込んではマイナスイオンを作り、飛び出してはプラスイオンとなるなど、イオン化により化学反応を活性化させるのです。

身体に栄養素としてたくさんの材料があったとしても、化学反応が起こらなければ、身体を活性化させるものを作り出すことはできません。放射線が通過すると、電子がイオン化して化学反応が活発になり、身体にある栄養素を材料にして質の良いタンパク質、酵素を作り出すことができるのです。

生体防御に関わる遺伝子が活性化

放射線は細胞の核にある遺伝子に対しても刺激として影響を与えることになります。たとえば、酵素を作って若さを維持する遺伝子が活性化します。細胞膜の透過性を良くして老化を抑えます。ガンのように変容した細胞をアポトーシス(自らの死)に導くガン抑制遺伝子p53も増加します。

放射線という強烈な刺激効果により自らの身の防衛のための遺伝子が増えて、結果的に生体の活性化につながるのです。生体防御に関わるあらゆる遺伝子が活性化し、抗酸化酵素や各種ホルモンが作られると考えられます。